何もないところから何かあるものが生じている!!
ある夜帰途をたどりながら歩いていた時、自分は何もしていないのに足が一歩ずつ前に進んでいくと気づいた。
ウォーキング好きの友人が「足が勝手に歩く」と言っていたのはこういうことなのか?
と思ったのだが、その時私は自分の足を見ずに前だけ見て歩いていた。
今ここには目の前の景色しかなく私の足はなかった。
そのことに気づいた瞬間、足で歩いていると思っていることが思い込みであり錯覚であるのだと気づいた。
こうして足が消えた。
残ったのは地面と思っているものに触れる感覚とコツコツという靴音。
これらの感覚を通じて足を連想し歩いていると錯覚する。
その時私は自分の足を見ていなかっただけでなく、自分そのものも見ていなかった。
というより、以前ブログにも書いたけれど自分で自分の全身を直接見ることは誰にもできない。
足だけでなく私と思い込んでいる肉体そのものもその瞬間消えた。
しかし、歩いているような感覚そして吹きすぎていく寒風(その夜はこの冬一番の寒さであった)等々を感じる感覚はあった。
思うに私たち人間は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・思考あるいは想念等の六感(六根)を通じて直接見たこともない心身が存在していると思い込み、その思い込みを自分だと信じ込んでいるのであろう。
感覚は確かにある。
しかし、これら六感の拠り所である心身が錯覚だとしたら、これらの感覚の拠り所(土台・根っこ)がなくなることになり、これら六感は何もないところから生じてくることになる。
感覚はあるが拠り所(土台・根っこ)はない。
あるとないは同時である。
これこそが「色即是空」ということである。
何もないところから何かあるものが生じている不思議!!
何もないところから歩くということが生じていることの、なんと神秘なことよ!!
改めてこの世の有難さに感動せずにはいられない。